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Vol.15 動的非線形解析検証

GTS Tips 2022.10.31

 盛土地盤の動的非線形解析をGTSNX(MIDASIT)とSoilPlus(CTC)で行い,応答値の比較検証を行った。

 1.解析条件
 ・解析手法:直接積分法による非線形動的解析
 ・数値積分法:・GTSNX:HHT-α法 ・SoilPlus:Newmarkβ法,β=1/4
 ・減衰:剛性比例減衰(C=βK,β=0.001)
 ・時間積分間隔:・GTSNX:DT=0.01秒(初期設定) ・SoilPlus:DT=0.001秒
 ・解析継続時間:Tmax=40秒
 ・地盤モデル:修正Ramberg-Osgoodモデル

 解析モデルを図1-1に示す。各土層の物性値は表1に示した値を用いた。

 

図1-1 解析モデル

表1 解析に使用した物性値

 ・軸差応力の影響を大きく考慮するため,全層地下水位以浅とする。
 ・動的解析時は体積弾性係数一定(初期のポアソン比から算出された体積弾性係数が一定となるようにポアソン比,ヤング率を算出)
 ・せん断弾性係数および基準ひずみで考慮する拘束圧依存の係数n1,n2は0.5とする。

 ・基準拘束圧は,各層の代表値で設定した。
 ・GTSNXでは拘束圧依存(γr)にバグがあるためパッチプログラムで対応した。

 解析に使用した地震波形を図1-2に示す。

図1-2 解析に用いた地震波

 

2.解析結果
2-1 初期応力解析結果
 初期応力解析の結果を図2-1に示す。初期応力状態は概ね一致している。

図2-1(1)鉛直応力σyyコンター

図2-1(2)平均応力σmコンター

 

2-2 動的解析結果
 図2-2に動的解析の結果を示す。
 加速度について,水平方向は比較的近い応答値になっているが盛土範囲下と盛土範囲外で傾向が異なっている。
 鉛直方向については応答値や傾向が大きく異なっていることが確認出来る。

図2-2(1) 最大水平加速度コンター

図2-2(2) 最大鉛直加速度コンター

 最大水平変位はGTSNXの方が盛土周辺で大きくなっているが,最大鉛直変位は小さくなっている。
 トータルの合成変位は水平成分が卓越しているためGTSNXの方が大きな結果となっている。
 最大せん断ひずみは盛土下部で大きくなる傾向は一致しているがGTSNXの方がかなり大きな応答である。

図2-2(3) 最大水平変位コンター

図2-2(4) 最大鉛直変位コンター

図2-2(5) 盛土相対変位最大時刻の合成変位コンター

図2-2(6) 最大せん断ひずみτxyコンター

 

3.検証まとめ

 今回GTSNX(MIDASIT)とSoilPlus(CTC)による2次元動的非線形解析による比較を行ったが水平方向の変形量の違いと水平・鉛直両方向の加速度に大きな違いがあった。
 図3-1に盛土を無しにした水平地盤の応答値の比較を示す。

図3-1(1) 最大水平加速度コンター

図3-1(2) 最大水平変位コンター

図3-1(3) 最大せん断ひずみτxyコンター

 

 水平地盤の応答値はほぼ一致していることから盛土による影響が大きいことがわかる。

 盛土直下の地盤では,下図に示すように盛土の重量により,地震以前に軸差せん断卓越して作用している。(①)そして,地震時に鉛直下方よりせん断波(②)が入射すると,単純せん断が卓越して作用する。
 一方で盛土側方の地盤では,地震以前においても軸差せん断に加えて単純せん断が作用しており,地震時にはその状態にさらに単純せん断が作用する。
つまり実際の地盤では初期の応力状態が場所ごとに異なり,地震時の影響も異なる。この初期の応力状態の違いを適切に評価するためには,せん断面の方向毎のばねを想定して計算を行う必要がある。
 SoilPlusでは単純せん断の他に軸差せん断も考慮することが出来るのに対して,GTSNXでは単純せん断のみ考慮しているモデルと考えられる。盛土地盤での応答の違いはその差によるものが大きい。今後GTSNXにおいても多方向にせん断ばねを考慮した計算が可能になることを期待しつつ,その時にはまた検証を行いたい。

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