トンネルの覆工コンクリートは、主に掘削された地山のゆるみ荷重や、グラウンドアーチの応力解放に伴う発生荷重等を負担するために施工されます。覆工の厚さ(巻厚)は通常20~40cm程度で、場所打ちコンクリートで造られますが、施工後若材齢で型枠が取り外されるのが一般的です。型枠の脱型時期の目安は、柱、梁等の側枠で圧縮強度が5.0N/mm2以上とされていますが、覆工コンクリートの場合、さらに短時間で脱型されます。
そこでmidasCivilによって、施工後に覆工コンクリートに発生する応力度を計算し、許容応力度と比較することによって型枠脱型時期を検討してみました。
まず、若材齢におけるコンクリートの物性値は、表1のように圧縮強度を3通り仮定し、コンクリート標準示方書に基づいて算定しました。ここで許容応力度は無筋コンクリートのものです。
表1 コンクリートの物性値と許容応力度
次に解析モデルですが、ここでは図1に示すような形状の覆工コンクリートを考えます。CADの図面があれば、DXFファイルで保存しておけばmidasCivilでそのまま梁要素として読み込むことができます。また、覆工コンクリートの巻厚を30cmとし、単位奥行き(1.0m)あたりについて計算するものとして、梁要素の断面形状を高さ0.3m、幅1.0m(図2)とします。さらに、弾性係数は表1のとおり設定し、コンクリートの単位体積重量は23.5kN/m3としています。
図1 DXFファイルの読み込みとモデル形状
図2 断面と材料データの設定
境界条件は、下端をピン支持、周囲の地山は圧縮のみに抵抗するものとし、図3に示すように要素に垂直な方向に節点ばねを設定します。この圧縮専用ばねは「面分布ばね支持」(図4左)を使うと簡単に設定できます。これは、ばねを設定する要素を選択し、地盤反力係数と要素幅(この場合は1.0m)を入力すると要素長さに応じて自動的に節点にばねを設定する機能です。ここで要素座標系を見てみると(図4右)、Z軸が内側に向いているため、ばねタイプの方向で「垂直(-)」を選択することによって、外側に対して地盤反力としての圧縮専用ばねが設定されます。ここでは地盤反力係数としてkr=2.0×105kN/m3を仮定しました。
なお、この「面分布ばね支持」では線形ばねはもちろん、引張専用ばねの設定もできますし、板要素やソリッド要素にも適用可能です。
図3 地盤ばねのモデル化
図4 面分布ばねの設定
さて、作用荷重ですが、覆工コンクリートは一般的に一次支保によってトンネルの変位が収束した後に打設されるので、ここでは自重のみしか作用しないものとします。自重のかけ方としては「静的荷重」の「自重」を使うのが簡単ですが、節点間のモーメントやせん断力も等分布荷重に対する結果が出力されてしまうので、通常のフレーム解析と同等となるように、ここでは各要素の質量を両端の節点に振り分け(自重を質量に変換)、「物体力」という機能を使って、各節点に集中荷重として自重が作用するようにしました。
解析結果として、圧縮強度Fc=2.0N/mm2の場合の変形図、軸力図、モーメント図を図5に示します。これより断面力がわかりますから、通常であれば軸力とモーメントによる組合せ応力度が、最大(あるいは最小)となる位置において、許容応力度以下であることを次式により確認すればよいことになります。
σ=N/A±M/Z≦σa
σ:応力度
N:軸力
A:断面積
M:曲げモーメント
Z:断面係数
σa:許容応力度
変形図
モーメント図
軸力図
図5 解析結果(Fc=2.0N/mm2)
ところでmidasCivilは要素の軸応力度、せん断応力度、曲げ応力度、および組合せ(曲げ+軸力)応力度をそれぞれ出力することができるので、断面力から発生応力度を計算しなくても、直接最大(最小)応力度を確認できます。図6はFc=2.0N/mm2の場合の組合せ(曲げ+軸力)応力度の出力です。それぞれ断面の上縁と下縁の結果を示していますが、断面の上下は先程の要素座標系の通りなので、+Z側すなわち内空側が断面上縁となります。
断面上縁(内空側)
断面下縁(地山側)
図6 組合せ応力度の出力(Fc=2.0N/mm2)
さて、このようにして算定した各ケースにおける最大(最小)応力度と許容応力度の一覧を表2~表3にまとめました。応力度は圧縮が負、引張が正で出力されますが、表には絶対値で示しています。これより圧縮強度が2.0N/mm2以上であれば脱型可能であることがわかります。
表2 圧縮応力度照査結果
表3 引張応力度照査結果
最後に所定の圧縮強度に達するコンクリートの材齢の目安をコンクリート標準示方書を参考に次式により求めてみました。中庸熱ポルトランドセメントの場合、結果は表5のようになります。
表4 定数a,b,dの値
表5 型枠脱型時のコンクリート材齢の目安