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Vol.8 ちょっとお得?な弾性連結要素

Civil Tips 2011.04.12

 弾性連結要素というのがあります。これは2節点間を連結するばね要素で、図1のように「一般」、「固定」、「圧縮専用」、「引張専用」、「マルチリニア」といったばねが選択できるようになっています。「一般」というのは図1にあるように、2節点間にX方向、Y方向、Z方向およびそれぞれの軸回りのばね定数を設定するもので、「固定」というのは剛体連結します。 「圧縮専用」と「引張専用」は文字通り、圧縮のみあるいは引張のみに効くばね要素で、荷重の作用方向に応じてばねを有効にしたい時などに使えます。 ここまではある意味線形の連結ですが、バージョン7.8からマルチリニアタイプが追加となりました(図2)。 これを使うと、たとえば構造物間に隙間があって、ある荷重が作用した場合に接触するかどうかわからないけれども、接触した場合には設定したばね値で荷重を伝達したい、と言った解析が可能となります。このマルチリニアタイプでは、通常のバイリニアやトリリニアはもちろんのこと、正負非対称のばねの設定も可能です。

図1 弾性連結要素

図2 マルチリニア

 そこで、簡単なモデルでこのマルチリニアタイプの弾性連結要素を検証してみます。モデルは図3のように並列する2本の梁要素の先端を弾性連結要素でつないだもので、その特性は図4に示すとおり、10mmのギャップを有するバイリニアタイプ(正負対称)のばねとしました。荷重は簡単のため、片方の梁端に強制変位としてA:10mm、B:20mm、C:30mm、D:40mmを与えています。解析の結果、得られた変形と荷重載荷点および梁の支点水平反力は図5のようになります。Aでは、まだギャップが閉じていないため、右側の梁に荷重が伝わっていません。B,Cでは弾性連結要素の剛性に従って荷重が伝達し、右側の梁に変形および反力が生じています。Dでは弾性連結要素が設定値以上の荷重を伝達しないため、途中から左側の梁のみ変形し、右側梁の支点反力は弾性連結要素の荷重上限値となっています。

図3 解析モデル               図4 弾性連結要素の特性

図5 解析結果(反力と変形)

 弾性連結要素は梁要素だけでなく、板要素やソリッド要素にも適用可能です。そこで板要素の例をひとつ。今度は5mmのエクスパンションジョイントを介して接する大きさの異なるコンクリートの底板を想定し、コンクリートを膨張させてこれらを接触させます。モデルは図6に示すとおりで、弾性連結要素には5mmのギャップを設定しています。コンクリートの線膨張係数を10×10e-6とすると、底板の長さが5mなので、60度の温度を与えればお互い3mmずつ膨張して接触します。

 midas Civilには右図のように様々な温度荷重(温泉マークがちょっと気になりますが…)が用意されていますが、構造物全体の温度を変化させる場合にはシステム温度荷重を使います。これは初期温度と最終温度を設定するだけなので簡単です。 解析の結果得られた軸圧縮力のベクトル図およびせん断応力のコンターを図7に示しました。ちなみに50度以下では接触しないので応力は発生しません。

図6 解析モデル

図7 解析結果

 このように、弾性連結要素といっても様々な非線形ばねを設定できるので、静的解析に限定はされますが、例えば地盤と構造物の境界、支承や落橋防止装置、桁とレール間のバラスト、杭の周面抵抗や水平方向反力等、いろいろな用途に使えると思います。 さて、ここで示した温度荷重も弾性連結要素もmidas Civilのスタンダード版(静的線形解析)で使用可能です(非線形オプションは必要ありません)。使いこなせばちょっとお得ではないでしょうか。ちなみに解析処理としては反復収束計算を行っており、パラメータの設定の仕方によっては収束しないこともあります。収束計算の設定はメインメニュー>解析>解析制御データから可能です(図8)。 弾性連結要素において非線形のばねを設定した場合、他の荷重条件の結果との線形組合せはできないので注意が必要です。また、動的解析では初期剛性を有する線形ばねとなってしまいます。動的解析において境界非線形を考慮した解析を行う場合には、汎用リンク要素を使用しましょう。

図8 弾性連結要素の収束計算の設定

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