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アトラクタ(その2)

技術屋のひとり言 2019.03.28

 有名なローレンツ方程式などの非線形方程式によって表されるアトラクタ(3次元的な軌跡)は非常に綺麗です。上図にアトラクタ形状を3例示しましたが、実際に得られるアトラクタはノイズを含んでいてここまで綺麗かつattractiveな形はしておりません。以前のコラム「アトラクタ」でもご紹介させて頂きましたように、構造物の応答(例えば橋梁の常時微動データ)からアトラクタを作成し、損傷前後のアトラクタの変化を把握することで損傷検知が可能となります。手前味噌ですが、「アトラクタ 橋」でgoogle検索(2019/3/11時点)して最初と2番目にヒットするのはどちらも弊社の論文です【参考文献①および②】。

 google検索で3番目にヒットするのは【参考文献③】の論文です。この技術は、実橋梁モニタリングの加速度センサデータをアトラクタに変換し、アトラクタの形をトポロジカルデータ解析にかけて構造部材の劣化度や変化度を評価するものです。また、google検索で4番目にヒットするのは【参考文献④】の論文で、この技術は車両が道路橋伸縮装置を通過したときに生じる音をカオス時系列解析により分析し、構造物の異常を検知するものです。これらのトポロジカルデータ解析やカオス時系列解析による評価方法に対して、弊社の論文ではアトラクタ軌跡長の比やアトラクタ主要点の原点からの距離を半径として求める変動係数を用いて部材損傷度を評価します。

 生理心理学の分野ではカオスアトラクタ等によるヘルスモニタリングは1980年代から進められており、指尖容積脈波データから人間のストレス状態を把握するなどの試みが行われていますが、建設分野の構造ヘルスモニタリングではアトラクタを利用した異常検知法はまだ普及しておりません。その理由の一つとして、評価方法が難しく容易に適用できないということが挙げられます。そこで、前述のように弊社では適用し易い評価方法を提案するとともに、シミュレーション解析を多数回実施する必要があるものの橋梁部材の異常検知を比較的容易に行える評価システムを提案しております【参考文献②】。

 難しい部分はソフト化で対応するのも手ですが、ブラックボックス化が懸念されます。最近のAI技術においてもその可能性があるように、人が理解できないまま使用するのは制御不能の状態ということで望ましくありません。わかり易い方法にすることで何か不利な点が出てくるかもしれませんが、それはそれでまた別のわかり易い方法で補っていく方がいいと思います。 (証)

【参考文献】
① 加藤,稲場,大滝:常時微動データのアトラクタに基づく鋼橋の損傷検出に関する検討,第20 回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集,pp.157-162, 2017.
② 加藤,稲場,大滝:車両走行時の振動応答アトラクタに基づく鋼アーチ橋の部材損傷把握に関する解析的検討,社内発表論文,2018/5.
③ 金児,梅田,梅宮,菊地,石黒,松林,石田:トポロジカルデータ解析を用いた橋梁モニタリングデータの分析,土木学会第73回年次学術講演会論文集,CS9-011,pp.21-22, 2018/8.
④ 服部,大島,塚本:車両通過音を活用した道路橋伸縮装置の異常検知に関する基礎的研究,土木学会論文集A2(応用力学), Vol. 67, No. 2 (応用力学論文集 Vol. 14), I_865-I_873, 2011.

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