心是為常楽
心是為常楽 2026.08.31*********************************** 高橋是清先生,曰く, 「心というのは,なにもくよくよ悩み惑うためのものではない.心は常に楽しみ,楽しませるためにこそあるものなのだ.」 どんな苦難に直面しても,常に人生を楽しめと説いたのである.おのれの運を信じ,楽観的に物事を見る.そこから拓ける道があると. ***********************************
これは,一ファンとして長らく愛読させていただいております作家:幸田真音氏の著作「天祐なり(高橋是清・百年前の日本国債)」から引用させていただきました. 今回,ブログをはじめさせていただくにあたり,いつも心に元気をもらえる名言として,はなはだ僭越ながら,タイトルに使わせていただきました. さて,本ブログ,一土木屋の日常あるいは業務経験の中から,ちょっとしたエンジニアリング的な気づきを含めて,読んでいただいた皆様の気持ちを少しでも和ませることができたらこの上ない幸せ,と思いつつ,綴ることができたらと考えております. 「くだらなさ過ぎ!」とお叱りを受けること必定ですが,それにもめげず,名言通り「楽観的に」をモットーに,皆様の多忙な業務の中でほんの少しでも息抜きになりますことができましたら幸甚に存じます.
by クレアテックの「閑雲野鶴」 こちらも高橋是清先生のお言葉からです. 「何者にも縛られず,自由に飛び回ることができたら・・・」
エピソード#1:専門家の振る舞いとは? 熱帯地域のある発展途上国で発生した大規模災害の現地被害調査から. 行けとなって(実は,公開された衛星写真を見て,どうしても現場の被害状況を生で確認したいという「やじうま根性」がうずうずしていたところ,誰か・・・と話が上がった際に,真っ先に手を挙げて),出発が決まり,出かける1週間前に,感染症の予防接種をしないとならない,という話が突然でてきて(えっ,全然気づいてない!).
日本脳炎,破傷風,狂犬病,劇症A型肝炎,腸チフス・・・,なんだか,予防接種だけで倒れてしまいそうな注射を多数ということで. まずは,日本脳炎,破傷風は,まあ日本でもそこそこポピュラーだしと,早速市内でも大きな〇〇総合病院に. ドクターからいつ出かけるのかと聞かれ,1週間後に出発,と答えると,急に不機嫌になって, 「出発1週間前? だったら,打てません.」 ときっぱり言われてしまった. どうやら,免疫がきちんと効くまでに,2回打たないとならないらしい. 「責任は自分でとりますので,打つだけ打ってください.向こうに行っている最中の後半に効くのでも助かります.」 と勝手な都合を述べたが, 「責任とれないから打てない.出発時期を遅らせたら考えてもいい.」と. エアチケットは手配済みだし, 「あなたは私に何も打たずに行けというのか.」 と子供のような逆切れなどしてしまい,これには, 「自分で責任をとるというやつに限って病院を訴えるんだよな.」 「そんなことするわけない.」 などと,なんだかんだと交渉したが,結局,一切の余地もなく,要望を受け入れてくれず. 「じゃ,結構だ(さすがに,こんな病院2度とかかるか・・・までは言わなかったが).」 と捨てぜりふを残して席を立ってしまった. でも,改めて冷静によくよく考えると,この対応,医学的に間違いない話をしてくれて,さらに患者の立場に立った適切な対応なのであり,責任感一杯の信頼できるまさにプロのドクターの振る舞い,なのかと. 土木の中でも,工期・予算などの厳しいプレッシャーの中で,十分熟慮できないまま正しい判断に至らず,大事故に至ってしまうということもあり得るのであり,我々土木屋もこのスタンスはとても大事だと痛感. そんなプロ中のプロのドクターに,大人げなく自分勝手な都合だけを言ってしまった.恥ずかしい.
でもなんとかしなければ.ネットで近傍の感染症専門医院を探すと,少し離れた町に一軒,見つけた. 「〇〇総合病院で断られました.もう時間がないのですが,打つ間隔を縮めたり,一度に打ったりなど,なんか手はありますか?」 「まかせなさい,大丈夫.〇〇総合病院なんか,私みたいな専門医いないんだから.」と豪語(頼もしい! 迷いもためらいも微塵も感じられない.診断結果について有無を言わせず患者を納得させることができる断言ぶりだ). 「まとめて2本うっちゃおうか.あと,狂犬病もどう?(セット注射でおまけするよ的な雰囲気?)」 助かった.さすが専門医だ. ここまではよかった. が,腕をまくって,注射を打つ段階になって,ドクターが診察室の薬ラックの傍にたっておもむろに紙を読み始めた. 「えーっと,筋肉注射ね.あれ,1週間あけて2回,って書いてるな.」 (〇〇総合病院の先生,そう言ってたよー!(と心の中で叫んでしまった)) 薬の取説書を真剣に読み込むドクターの背中は見たくなかった.それに,わざわざ聞こえるように声に出して読まなくても・・・,と. そんな取説書も無視?して, 「大丈夫,大丈夫,私の経験からは.2本一気でもいけるよ.」 素人考えでも,免疫作るんだから,量をたくさん打てばいいって話ではない・・・ようにも思うのだが,・・・.それに,もう時間がないので,打たないよりは打った方が絶対にいいはずとの判断で,打ってもらった.
後日,一緒に調査に出かける△△社の方に聞いたら,黄熱病も打ったよなどと(あれ,かの地も要るんだったっけ?),東京の病院ではもっと多種を同時に打ってくれたよ,などと,打った本数の自慢話になったり,自分は狂犬みたいだから(なんでもかんでもうるさくかみつくタイプ,もとい! 細かく丁寧に意見するタイプ),まあ狂犬病はいらんよな,などとおやじギャク言いあったりしながらも,他の病院でも大丈夫だったということは,あのドクター,やっぱ現場経験豊富な専門医なのかなぁ,いや,あの取説書を真剣に読む背中は感染症の専門家とは見えなかったなぁ・・・. でもでも,感染しないで,無事,戻ってきたので,結果オーライで,感染症専門ドクターの名前に傷はついていないのです.
熱帯地方で次に重要なマラリア対策. 先輩がやはり海外派遣後に,マラリアに罹って大変だった状況を目の当たりに.震えるほどの高熱のため,市内で2番目に大きい病院に入院されたのですが,そこのドクター,なかなか病名を特定できず,やっと判明した際には,初めてマラリアの患者を見た,と言われたそうで. 日本の薬を持っていっても,地域によっては効かない場合もあるらしい,現地調達の方が良い,と勧められて.被災地は被害で大変なので薬を入手できるかどうかわからないということで,途中経由地のホテル近くの薬局で購入. これをOne pill per day(1日1錠)と言って渡された. ホテルに帰って,さあ飲むぞと,錠剤ケースをみたら,1週間に1錠と書かれていて.あれっ,1日1錠との説明だったし.再度薬局にもどって,ここにそう書いてるけど,と確認したら,白衣をきた薬剤師さんから,そうかも,よくわからない,と言われてしまった. 「あなた,一日1錠飲んでるの?」 「わたしは飲んだことない(子供のころからかかったことがあって,免疫(耐性)的なものがあるらしい)」と. 副作用もあって,1日1錠と1週間に1錠だと全然違うから要注意だし,効かなかったら困るなと思いつつ,とりあえず,取説書は間違いないだろうと,それに従って飲むことにした. ちなみに,この調査は,災害調査の分野で著名な先輩方とご一緒させていただき,購入した薬を分配して飲むことに. 次の日の朝に, 「マラリアの薬,飲んだ? おなか,大丈夫?」と聞かれ, 「大丈夫です.もうマラリアこわくありません.副作用みたいのも全然ないです.」 と元気一杯に答えたところ, 「大丈夫みたいだから,それじゃ,私も飲もうかな.」 と,慎重派の先輩から,生き抜くための処世術?のようなことも身をもって教えられました.
さて,現地では,その薬のためか体調最高で,約1週間下痢もせずまったく問題なく,あちこち走り回って調査を実施. マラリアも,はまだら蚊という蚊が媒介するが,お目にはかからずでした. 約1週間の調査を終えた後,先方政府機関への報告のため,首都に移動.被災地域は宗教の関係でお酒は一切売っていない.首都に戻って久しぶりにお酒入り食事で, 次の日,みんな,下痢. ある方は,病院に薬をもらいにいったところ,アメーバなんとかだといって,入院しろと言われた,とのこと. 私も日本に戻った後,下痢がなかなか治らないので,例の感染症専門ドクターのところに. 「同行のメンバーが現地でアメーバなんとか(アメーバ赤痢は大変な病気)で,現地の病院にかかりました.多分,私もアメーバなんとかじゃないかと心配なのですが.」 すると,またまた,分厚い本を取り出して, 「アメーバ・・・は,血便で・・・.血便出てる?」 「血便は出てないです.」 「じゃ,大丈夫だろう・・・・(と本に書いてある).」 と最後まで,プロの感染症専門ドクターらしさをみせてくれませんでしたが,またまた結果オーライ,でした.
さてさて,土木屋・エンジニアとして,専門家のあるべき振る舞いとは?
〇〇総合病院の先生のように,技術的事項について,きちんとした根拠を持って,時間など周りからの制約に流されることもなく,自信をもって判断,行動ができるように,また,その時点で,わからないことはわからない,だから理解するための努力を惜しまない,ように振る舞いたいと思うのです.
もちろん,豊富な実務経験ある専門家の相場観的な判断が,結果オーライにつながる確率も相応に高いと思うのですが,やはり,データなり科学的根拠なりを重要視していくべきではないかと思うのです.
(次号に続く)