コーン状破壊の再現解析
DIANA Tips 2022.07.04 1.設計式での許容引抜き力
コンクリートアンカーの引抜き耐力は以下の破壊形態に対し計算されます。
1)アンカーボルトと定着体の付着切れ
2)アンカーボルトの破断あるいは降伏
3)コンクリートのコーン状破壊
本レポートでは3)のコーン状破壊による引抜きについて取り上げます。
設計で用いられる許容引抜き力の計算式は以下の通りです。
使用アンカーボルトをM20,Fc=24[N/mm2],Le=100[㎜],D=40[㎜] で許容引抜き力Pa1を計算すると,
2.有限要素解析
軸対称モデルを使用し,その解析モデル図ならびに解析仕様を下記に示します。なお,固定ひび割れと回転ひび割れモデルの両者で計算を実行します。
・引張軟化曲線はHordijkモデルを使用
・コンクリート引張強度:Ft=1.91N/㎜2
・引張破壊エネルギー:Gf=0.1N/㎜
・圧縮軟化曲線はThorenfeldtモデルを使用
・せん断伝達係数:β=0.02【固定ひび割れモデルの場合】
・アンカー体とコンクリートの間は完全付着
・アンカー体は剛体
・荷重:鉛直方向強制変位Δδ=0.002mm
3.解析結果
まず,荷重変位関係を下図に示します。顕著な耐力低下がみられない固定ひび割れモデルに対し,回転ひび割れモデルは60~70kNで荷重ピークが確認できます。これは前述の低減係数を考慮しない設計式から得られる許容引抜き力とほぼ同等の結果であることがわかります。
次に強制変位0.016㎜,0.100㎜,0.200㎜におけるひび割れひずみ図と0.200㎜時の変形図を以下に示します。
固定ひび割れと回転ひび割れでは,ひび割れの発生領域や進展方向に違いがあることがわかります。
4.まとめ
コーン状破壊の再現性は固定ひび割れモデルより回転ひび割れモデルの有利であると考えられます。これはひび割れ性状の違いに由来していると考えられます。但し,鉄筋コンクリート構造で,せん断補強鉄筋が十分に配置されているような部材に対する様々な破壊形態の再現性まで言及したものではありません。
(縞)