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変位って何?

解析全般 2015.01.29
 我々はよく「この構造物は、近接掘削工事の影響によって何mm沈下する。もしくは、側方変位が生じる。」というような話をします。この際、あまり意識していませんが、この変位は、周辺の地盤の影響を受けないように空中に仮想的に基準点をとって測った、所謂、絶対変位と呼ばれるものです。
 しかし、この変位を現実に正確に測ることは非常に難しいことです。なぜならば、計測の際には、この基準点を仮想的な点ではなく、現実のどこかに取らなければいけないからです。
 通常、土木・建築の計測では、工事により変位が生じないと考えられる遠い場所に基準(不動)点をとり、その点を基準(不動)として、計測したい箇所の変位を測ります。しかし、土木・建築の分野ではこの工事が広範囲にわたることが多く、その基準(不動)点を数10mから数100m離れた位置にとらないといけない場合があります。
 ここで、問題となるのは、基準(不動)点が遠くなるほど計測精度が落ちることです。数10mから数100m程度離れた点を基準点として、mmレベルの高精度で測るというのは、距離の問題だけではなく、計測点と基準(不動)点の間の障害物の問題もあり、かなり大変です。
 筆者は一時土木計測の仕事に携わっており、この時、約450m離れた2点を基準点として、その2点間の各点の変位計測や、約100m×約100m×深さ約20mの掘削工事近接の構造物の変位計測をしたことがありますが、大変な苦労をしました。
 距離が長いということの他に、計測期間が数年と長期間となり、生じた変位の解釈の難易度が非常に高くなりました。
 これに対し、地盤のFEM解析では、解析変位は絶対変位のように思えますが、実際には、両側端を水平変位拘束、下端を鉛直方向変位拘束とする境界が事実上の基準(不動)点となります。ただし、FEM解析では、境界を好きなだけ遠くに設定できるので、境界を遠くにとれば、絶対変位に近い値が求められると思われがちですが、2次元解析では、境界の位置によって変位結果が大きく異なることがあるため、一概に遠くにとればいいというものでもありません。
 しかし、FEM解析の結果を計測値と比較する場合には、絶対変位にこだわる必要はありません。FEM解析の結果も図のように計測と同一の点に基準(不動)点をとり、その点からの相対変位にしてやれば、計測変位と矛盾なく比較することができます。
皆さんはどう思われますか?

(ご)

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