Vol.9 トラスが破断!?
Civil Tips 2011.05.10対象は図1に示すような簡単なワーレントラス橋です。断面の諸元は省略しますが、それほど複雑なものではありません。また、簡単のため、床版その他の細かな部材は省略しています。ここで、図のように右から二番目の斜材を破断させることを考えます。
さて、解析の手順ですが、以下のように行いました。
① あらかじめ破断させる箇所で要素を分割したモデル(破断点に節点を設ける)を作成する
② 静的解析により初期状態(今回は自重のみ)の解析を行い、破断箇所の節点力を求める
③ 破断箇所を2重節点として要素を分割し、それぞれの要素端に①で求めた断面力を作用させ、
初期状態を再現する
④ ③で設定した断面力を急激に解放する
以上の手順を踏めば、破断後の挙動をシミュレーションできます。④の荷重を急激に解放する方法は、時刻歴荷重で静的荷重を制御するという方法で使います。では、具体的にどのようにやるか見てみましょう。
まず、静的自重解析ですが、これは「静的荷重」の「自重」機能を使えば簡単です。結果は図2のようになります。破断点には節点を設けてありますが、まだ繋がっています。
ここで、破断点の節点力は表1のようになっています。節点35が分割点の節点番号で、要素42と要素95で共有しています。これを2重節点にすると、たとえば要素95のI端の節点番号が36となり、要素を分離させることができます。2重節点の作り方ですが、「要素分割」機能を使えば任意の位置で要素を分割できるので、分割した節点の座標と同じ座標を持つ節点を節点テーブルで作成し、要素テーブルで分割した要素の構成節点を入れ替えてやれば簡単です。
この節点35と36に表1の断面力を作用させてやれば自重載荷時の釣合状態となります。ところがCivilの「節点荷重」機能では要素座標系で荷重を定義できない(全体座標系となる)ので、斜材などでは節点荷重を計算する(全体座標系に変換する)のが面倒です。一方、「梁要素荷重」機能を使えば要素座標系で荷重を定義できるので、要素42のJ端と要素95のI端に符号に注意して表1の荷重を与えてやればよいことになります(図3)。(表1の梁要素の出力結果と要素座標系では符号の定義が若干異なるので注意して下さい)実際に計算してみて断面力が適切に再現できているか確認すればOKです。
さて、次にこの断面力を一度に解放しなければなりません。そのためにはちょっと工夫が必要です。基本的には時刻歴解析になるわけですが、破断したモデルの静的自重解析を行い、その結果を引き継いで釣合断面力を時刻歴で徐々に載荷していき、釣合状態になったところで、一気にゼロにしてやります。
Civilでは「静的荷重ケース」で定義した荷重セットに対し、「時刻歴荷重関数」を乗じて時刻歴荷重にすることができるので、釣合断面力に例えば図4のような時刻歴荷重関数をかけてやればよいことになります。ここでもうひとつ注意しなくてはならないのは、動的解析は静的解析の断面力を引き継ぐことはできるのですが、変位、速度、加速度を引き継ぐことができないので、自重解析も図5のような時刻歴荷重関数(ただし、途中でゼロにはしない)によって動的解析で行う必要があります。また、積分法は直接積分法を選択して下さい。(図6)
解析結果をアニメーションで表示します。変形は100倍にして表示していますが、破断直後の振動の様子がよくわかります。また、モーメントについては破断した部材直下の縦桁のモーメントが大きく変動する一方、それ以外の部材の変動は相対的に小さいことがわかります。軸力は破断直後に破断した部材の軸力がゼロになり、その他の主要部材はほぼ一様に変動しています。
このように、静的荷重に時刻歴荷重関数を乗じて荷重を定義すると様々な荷重を定義できるので、解析のバリエーションも広がるのではないでしょうか。また、これを静的非線形解析と組み合わせるとプッシュオーバー解析になりますし、時刻歴荷重関数に正負繰り返しのパターンを設定してやると、よく耐震実験で行われる正負交番載荷のシミュレーションができます。
・モーメント
・軸力