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DIANAによる鉄筋コンクリート梁の変動軸力下におけるせん断性状の検討

DIANA Tips 2023.08.30

1. はじめに
 鉄筋コンクリート(以下 RC)梁のせん断強度には,軸力が大きく影響すると考えられているが,引張から圧縮まで変動する軸力(以下 変動軸力)時のせん断強度やせん断抵抗機構の変化については不明な点が多い.そこで本研究では,DIANA(汎用構造用解析ソフト)を用いてRC梁にせん断力を正負交番漸増載荷し,圧縮一定軸力,引張一定軸力および変動軸力を作用させ,RC梁のせん断強度およびせん断抵抗機構に与える影響を検討する.

2. 解析概要
2.1 解析モデル
 解析に使用するモデルの側面図および断面図を図-1,2,解析モデル図を図-4に示す.また,解析設定値を表-1,コンクリートの応力-ひずみ曲線を図-3に示す.解析モデルはコンクリートの分散ひび割れモデルと離散鉄筋モデルの組み合わせとし,コンクリートを2次元平面応力要素,鉄筋を埋込鉄筋要素でモデル化した.また,解析時間を短縮するため,対称性を考慮しRC梁の半分をモデル化した.鉄筋の降伏判定にはVon Mises降伏基準を適用した.

図-1 モデル図(側面図)

 

表-1 解析設定値

 

図-4 解析モデル図

2.2 載荷方法
 せん断力の載荷パターンを図-5,変動軸力の載荷パターンを図-6に示す.せん断力は変形角1/200,1/100を各3サイクルずつ強制変位で載荷する.圧縮および引張一定軸力時は,軸力700kNを載荷した状態にせん断力を正負交番漸増載荷する.変動軸力時は,せん断力の正負交番漸増載荷の載荷方向に合わせて軸力±700kNを載荷する.

3. 解析結果
3.1 ひずみベクトルおよびVon-Mises応力図
 圧縮および引張一定軸力時における変形角+1/100の1サイクル目のひずみベクトル図を図-7,9,埋込鉄筋のVon-Mises応力を図-8,10に示す.図-7,8より圧縮一定軸力時は,せん断スパン内で引張ひずみの大きい領域が集中し,せん断補強筋が降伏していることから脆性的なせん断破壊が生じていることがわかる.図-9,10より引張一定軸力時は,局所的な引張ひずみは見られず,せん断スパン内およびモデル上部(引張側)に分散されている.また圧縮一定軸力時と比較し,せん断補強筋の降伏範囲は小さく,引張側の主筋は降伏に達した.

図-7 ひずみベクトル(圧縮一定)

図-8 埋込鉄筋Von-Mises応力(圧縮一定)

図-9 ひずみベクトル(引張一定)

図-10 埋込鉄筋Von-Mises応力(引張一定)

3.2 せん断力-層間変位曲線
 各軸力載荷時のせん断力-層間変位曲線を図-11~13,せん断強度を表-3に示す.設計せん断圧縮破壊耐力Vddは文献1)に示す式(1)より算出し,表-2に算出に用いた値を示す.表-3より圧縮一定軸力時のせん断強度は引張一定軸力時より5.5%大きい.変動軸力の引張軸力時のせん断強度は引張一定軸力時の73%,同様に圧縮軸力時のせん断強度は圧縮一定軸力時の96%であった.変動軸力を受けるRC梁では,圧縮および引張軸力時に関わらずせん断強度は低下するが,引張軸力時で顕著に低下した.
 図-11より圧縮一定軸力時では,せん断強度到達後は急速に破壊が進み,せん断耐力はVddまで低下した.図-12より引張一定軸力時では,圧縮一定軸力時と比較するとせん断強度および剛性は低下するが,1/100までほぼ最大せん断力を保持したのち,耐力低下した.圧縮一定軸力時と比較しせん断強度が低下する要因として,引張軸力下ではひび割れが開いてせん断伝達が期待できなくなることが挙げられる.一方、1/100まで耐力を保持したのは圧縮一定軸力と比較して損傷領域が分散したためと考えられる.図-13より変動軸力時では,せん断耐力の低下は圧縮軸力時で急激,引張軸力時で緩やかとなり,圧縮および引張一定軸力時の結果と同様な傾向を示した.

3.3 変動軸力時における負担せん断耐力
 変動軸力時における変形角1/200の2サイクル目のアーチおよびトラス機構による負担せん断力を図-14に示す.トラス機構による負担せん断力Qtは文献2)に示す式(2),アーチ機構による負担せん断力Qaは式(3)より算出する.
 図-14より軸力に関わらずトラス機構による負担せん断力はほぼ一定であるのに対し,アーチ機構による負担せん断力は大きく変化した.文献3)で想定されたように,軸力が変動することによって影響を受けるのはアーチ機構であることが示された.

 参考文献
1)土木学会:コンクリート標準示方書【設計編】,2023年3月.
2)高見信嗣,吉岡研三:超高強度コンクリートを用いたRC柱のせん断強度に関する研究,大林組技術研究所,1998年.
3)日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針(案)・同解説,1997年7月.
4)吉田格英,北山和宏,西川孝夫:引張軸力を受ける鉄筋コンクリート柱のせん断強度に関する研究,日本コンクリート工学,1996年.
5)横尾一知,北山和宏,小山明男,豊田浩一:変動軸力が鉄筋コンクリート柱のせん断性状に与える影響,日本コンクリート工学,1998年.
(い)

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