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スロッシング解析その2

解析全般 2021.11.19

 前回のコラムでは、速度ポテンシャル理論の計算式によるスロッシング固有周期と液面上昇量を3次元FEM解析で再現できることを確認したが、3次元モデルの液面中心部で応答の乱れ(アワグラス変形)が見られた。
 今回のコラムでは、メッシュ形状を変更することによる応答への影響を検証していく。

1. 解析モデル(メッシュ形状変更)
 下図のように、タンクの物性値や寸法は変更せず、メッシュ形状のみを変更した解析モデルを作成した。メッシュ形状を変更することで節点数・要素数ともに増え、また中心部を格子状にすることでメッシュクオリティが改善し、解析精度の向上が見込める。

図1 解析モデル(メッシュ形状変更)

 

 固有モード図を下図に示す。メッシュ形状を変更する前とおよそ同じ結果となるが、5次モードと6次モードがメッシュ形状を変更することで入れ替わっている。これは、5次モードと6次モードの固有周期が0.01秒しか変わらないことが原因と考えられる。

図2 スロッシング固有モード図(メッシュ形状変更)

 

2. 解析結果
 解析には前回のコラムでアワグラス変形が発生していた十勝波を用いた。スロッシング解析結果を下図に示す。中心部のアワグラス変形が抑制され、液面が自然な変形をしていることがわかる。

図3 メッシュ形状変更前 液面上昇量最大時(45.63秒) ※変形倍率:実寸×1.0

 

図4 メッシュ形状変更後 液面上昇量最大時(45.60秒) ※変形倍率:実寸×1.0

 

 下図にそれぞれのモデルの液面中心での液面上昇量の時刻歴を示す。メッシュ形状の変更により、アワグラス変形による応答値の固さが改善されていることがわかる。

図5 液面中心での液面上昇量比較

 

 また、下図にそれぞれのモデルの液面上昇量が最大となる節点の時刻歴を示す。概ね一致しているが、これは各節点がタンクの壁と近いところにあり、液面中心部のアワグラス変形の影響があまりないためだと考えられる。

図6 最大波高となる節点での液面上昇量比較

 

 また、メッシュ形状を変更したモデルでの動画を下図に示す。十勝波が100秒ほどで収束した後も液面が大きく揺動していることがわかる。

 

 最後に、下表にてそれぞれの手法で求めた最大液面上昇量と実際の被害報告での最大液面上昇量を比較する。

表1 最大液面上昇量比較

 

 速度ポテンシャル理論では最も影響の大きい1次モードしか取り扱わないこと、および構造物の影響を考えないため、液面上昇量を大きく評価する傾向にあると考えられる。

 また、3Dスロッシング解析ではメッシュ形状を変更することにより少しではあるが実際の被害報告に値が近づく結果となった。より実現象に近づけるために、鉛直動の追加など多方向入力とした場合、メッシュの形状がこれまで以上に解析結果に影響を及ぼすのか、今後の課題としたい。

(か)

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