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FEM解析における梁要素

解析全般 2016.08.02

 地盤解析において、梁要素は、杭、土留壁、トンネルの鋼製支保工などに使用しますが、地盤をモデル化したソリッド要素、平面要素と併用されることが多く、力は地盤をモデル化した要素を介して梁要素に伝達されることが普通です。
 ここでは、単純梁に等分布荷重を載荷した場合と平面要素の自重を載荷した場合において、変位や梁要素に生じる断面力の違いをGTS NXを使って調べてみました。

【解析条件】
 検討した解析条件は以下のようである(図-1)。
 ・モデルは単純梁
 ・荷重は、等分布荷重またはそれと等価な平面要素の自重の2種類
 (※等分布荷重は、GTS NXにおける梁要素荷重を使用)
 ・梁は、1要素分割、2要素分割、10要素分割の3種類

G1608-1 図-1 解析モデル図

【変位の結果】
 等分布荷重を載荷したケースの中心の変位量は、2要素と10要素共に理論値と等しい。一方、1要素のケースは0であるが、これは、変位を算出する節点がないためである。変位分布に関しても、節点位置でないと変位量を出力できないため、2要素では直線分布、10要素では曲線分布となる。
 平面要素の自重を載荷したケースは、1要素では等分布荷重のケースと同様に中心の変位は0である。2要素では0.6391となり、これは、要素の自重を各節点に分配し集中荷重として載荷させた場合の理論値0.6531に近い。10要素の場合は0.7973と等分布荷重の場合の理論値0.8138に近い。検証はしていないが、平面要素の自重を各節点に分配し集中荷重として作用させた結果と近い値になっていると考えられる。

G1608-2 図-2 変位分布

【曲げモーメントの結果】
 等分布荷重を載荷したケースの最大曲げモーメント値は、2要素、10要素とも理論値と同じある。1要素の場合の最大曲げモーメント値は0と表示されているが、モーメントの分布図は、すべて同じ2次曲線になっている。この出力は、ソフトの特性であると考えられる。
 平面要素の自重を載荷したケースでは、1要素では曲げモーメントは生じない。2要素の場合は、中央に集中荷重を載荷した場合の理論値3.125に対してわずかに小さい。10要素の場合も等分布荷重の理論値3.125よりもわずかに小さい。変位の結果でも同様であるが、これは集中荷重に置き換えたことと平面要素の剛性の両者の影響によるものと考えられる。

G1608-3 図-3 曲げモーメント分布

【せん断力の結果】
 等分布荷重の場合は、すべてのケースで値も含めてせん断力分布は一致している。平面要素の自重を載荷した場合は、平面要素の剛性の影響がある程度みられるが、基本的には、各節点の集中荷重の影響による階段状の分布になっている。

G1608-4 図-4 せん断力分布

【おわりに】
 梁要素に平面要素を介して荷重を載荷した場合、荷重は繋がれている両節点に振り分けられるため、解析結果は理論解と一致しないことを確認しました。このため、要素分割が粗くなると、誤差が大きくなります。
 とくに変位に関しては、杭、土留壁、トンネルの支保等をモデル化している梁要素の変位分布が正確でない場合には、周辺の地盤や構造物の変位が異なることになるため注意が必要になります。

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