Vol.7 「初期応力」機能
GTS Tips 2015.10.27GTS NX において新たに追加された機能の一つである「初期応力」について紹介します。
これは、静的応力解析時において、初期応力状態を作る際に、自重を作用させるのではなく、任意の応力状態を入力して、初期応力状態を作ることができる機能です。 この機能により、初期地圧測定等により、地山内の初期応力状態が把握されている際には、その初期応力状態より空洞の掘削解析を行うことができます。 具体的には、図-1の「初期応力画面」において、要素を選択しそこに初期応力を入力します。初期応力は、選択した要素に対して、一定の応力でも関数依存の応力でも構いません。関数依存にして深度に比例させることもできます。
1.検証方法
実際に簡易なモデルで検証を行いました。
ここでは、斜面下で通常の初期応力状態を求めた後に、トンネル部を掘削した場合の解析結果と、「初期応力」を設定した後にトンネル部を掘削した結果を比較しました。
実際の比較ケースを図-2に示します。
各ケースの詳細について説明します。
①解析-0
まず、図-3のモデルを用いて初期応力解析を行い、この斜面における応力状態(図-4)を求めます。
(a) σx | (b) σy | (c) σxy |
②解析-1
解析-0に引続き、トンネルを掘削します。通常行う解析手順です。図-4の応力状態から掘削解析を行います。
③解析-2
解析領域はトンネル周辺のみ(図-5の赤枠部分)として、解析-0における初期応力解析時のトンネル中心の応力を解析領域全体の初期応力とし、トンネルを掘削します。
したがって、初期応力状態σx・σy・σxyとも図-6のように全領域で一様です。
図-5 解析-2における解析領域(赤枠部分) | 図-6 解析-2における初期応力状態 |
解析領域は、解析-2と同様にトンネル周辺のみ(図-7の赤枠部分)として、解析-0における初期応力解析時のトンネル上方および下方の応力を線形分布させ、解析領域全体の初期応力とします。
したがって、初期応力状態σx・σy・σxyとも図-8のように深度方向に一様に変化します。
図-7 解析-3における解析領域(赤枠部分) | 図-8 解析-3における初期応力状態 |
図-9に各ケースの水平変位と鉛直変位のコンター図および最大変位量を示します。
解析-1に対して解析-2、解析-3とも最大変位量はわずかに異なりますが、コンターではほぼ同様な分布になっています。解析-3の初期応力状態は解析-2よりも解析-1に近いため、変位の結果もそうなると考えられますが、鉛直変位の最大変位量ではそうなってはいません。この原因は、変位の境界条件と初期応力の変化量に対して掘削部の高低差が小さいことが考えられます。
水平変位 | 鉛直変位 |
(a) 解析-1 | |
(b) 解析-2 | |
(c) 解析-3 |