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なかなか手ごわい、「周面摩擦」

技術屋のひとり言 2020.04.03

 グラウンドアンカー工法、補強土工法やロックボルト工法などの検討にあたっては、地盤との「周面摩擦抵抗」をどのように設定するかが一つのポイントになります。杭やケーソン基礎でも同様かと思います。事前に現場で確認できれば一番良いのですが、ハードルが高いのが現実です。実務上は、豊富な試験データに基づいた周面摩擦抵抗値が各基準書に示されていて、標準的な設計を行うことが可能となっています。

 メカニズムから見た場合、周面摩擦抵抗には各種の要因が絡み合っていて、なかなか複雑と思われます。異形鉄筋とコンクリートの付着抵抗機構に関する研究は数多く行われてきましたが、鉄筋コンクリートでは、付着ひび割れによるダメージを除けば鉄筋の「かぶり厚」は無視できそうです。一方、地盤では有効拘束圧が周面摩擦抵抗に影響を与えるため、「土被り厚」は考慮すべきファクターとなります。

 棒状補強材やアンカー定着部など、鋼材、ボアホールとグラウト材の3者が混在するケースでの周面摩擦(あるいは付着)現象は、さらに厄介ですね。鋼材の特性のみならず、ボアホール径、ボアホール形状(孔壁の凹凸)や、定着長の影響による発生せん断応力の進行性などによっても影響を受けそうです。

 ところで以前、密な砂中に埋め込んだアルミニウム板の引抜き実験を行ったことがあります。板の表面は粗い/滑らかの2ケースで、板周辺の砂の挙動はエックス線を照射することにより観察しました。粗い表面のケースでは板周辺での影響領域とともに、板の近傍に砂のせん断層と見られる領域が確認できました。せん断層厚は粒子径に関係するとされていますが、ダイレイタンシー特性が周面摩擦抵抗に影響を及ぼすことを示唆しています。

 余談ですが、私もアルミニウム板と同様に表情が粗く(?)なって、周辺との摩擦が生じることがありますが、「専断」に対する抵抗力はできるだけ保っていきたいと思います。

図-1 表面が粗いアルミニウム板の引抜き実験結果 図-2 表面が滑らかなアルミニウム板の引抜き実験結果

(てこ)

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