不思議な開花を毎年待ちます
歳時記 2025.04.24現在、観測定点で最盛期を迎えているちょっと不思議な姿をした植物2種類のご紹介です。 両方ともサトイモ科、直射日光が苦手で、木立の作る日陰を利用して生えています。
まず、ウラシマソウ(浦島草)です。

花のように見える紫色の部分は、「仏炎苞(ぶつえんほう)」(苞は「つと」 納豆のつと)と呼ばれ、実は花でなく葉です。花は小さな花の集まった「肉穂花序」(にくすいかじょ)を形成、仏炎苞の中に有るので写真では見えません。ツル状の物が上に伸びていますが、これは「肉穂花序」の先端が細長く伸びたもので、これを釣り糸に例え、そこから浦島太郎に発想を飛ばしたのが名前の由来です。このネーミングした方の連想力は素晴らしいと言うか異常と言うか。私にはこの形状から浦島太郎は思い付きません。
次はムサシアブミ(武蔵鐙)です。ウラシマソウと同様仏炎苞を持ちます。

鐙とは馬具で、鞍の下部に取り付けて騎乗時に乗り手が足を置くものです。 競馬ファンは鐙と聞くと、競走馬で使用するアーチカルバート型の物を考えると思いますが、あれは「洋鐙」と言う形です。 この花で意味する鐙は「舌長鐙」と呼ばれる我国で用いられていた形で、Jの字型をしています。確かに仏炎苞を上下ひっくり返すと、Jの字型になります。ムサシと付いているのは、当時鐙は武蔵の国製造の物が品質が良かったため、だそうです。
稀少種で、毎年春にこの2種の姿を見ることができるかどうかが、私たちの森の管理が妥当かどうかのバロメーターとなっていますが、今年も一安心です。
(K.B)