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埋め込み要素を用いたプレストレスの入力方法

DIANA Tips 2023.12.05

1. はじめに
 プレストレストコンクリートのプレストレス導入法には下図のポストテンション方式とプレテンション方式がありますが,今回はDIANAによる埋め込み付着すべり要素を用いたポストテンション方式の導入方法を紹介します.

図-1ポストテンション方式1)

 

2. 解析概要
 DIANAのチュートリアル資料2)をベースとした解析対象モデルを図-2に示します.2径間連続PC桁を対象とし,死荷重でフルプレストレス状態,集中荷重載荷時に引張強度以下となるように条件設定します.全て材料線形とし,計算方法は下記2段階解析とし,DIANAの「フェーズ解析」を使用します.

図-2 対象モデル

 

    1)フェーズ1 “Phased-post-tensioning”     :死荷重+プレストレス導入
    2)フェーズ2 “Phased-locked”         :集中荷重載荷

 1)では,PC鋼材(SWPR7B:12s15.2)の発生応力が1100N/㎜2となるように緊張力F=σp×A=1100×1664.4/1000=1831kNで両引きします.さらに,緊張力に対する水平反力をコンクリート端部に面荷重として同時に載荷します.その際,コンクリート・鋼材間はアンボンドとします.
 次に2)で,緊張力と面荷重を解放し,PC鋼材端部に定着部を設け固定条件を与え,さらにコンクリート・鋼材間をボンド条件とした後,集中荷重100kNを第1径間中央に載荷します.

3. 具体的な設定
 DIANA上での具体的な設定法を説明します.まず,桁,PC鋼材,定着PL,ならびに支承のシェープを図-3の通り設定します.

図-3 解析モデル(ジオメトリ表示)

 

次に図-4に示すように,PC鋼材に緊張力,それと等価な水平反力を面荷重として入力します.

図-4 荷重状況(上)PC鋼材に与える緊張力(下)緊張力と等価なコンクート端部に与える面荷重

 

 ベントアップダウンが必要なPC鋼材は埋め込み要素を使用し,さらに付着すべりインターフェースを考慮します.フェーズ1で,アンボンドのPC鋼材に緊張力を与え,フェーズ2で周辺コンクリートと一体化します.これを図-5~図-7のようにせん断方向の付着すべり剛性をフェーズ間で切り替えることで再現します.

図-5 極小なせん断方向付着剛性を有するインターフェイス特性
(フェーズ1で使用)

 

図-6 充分な付着剛性を有するインターフェイス特性
(フェーズ2で使用)

 

図-7 埋め込み要素に割当てる付着すべり特性のフェーズ間の切り替え

 

4. 計算結果
 PC鋼材の応力コンターを図-8,図-9に示します.プレストレス導入時,端部で所定の1100N/㎜2,中間支点上で1050 N/㎜2となり,集中荷重載荷時は第1径間中央の鋼材応力度がやや増加することが確認できます.

図-8 PC鋼材応力度コンター(死荷重+プレストレス導入)

 

図-9 PC鋼材応力度コンター(集中荷重載荷)

 

 図-10,図-11に直応力コンターを示します.プレストレス導入時にフルプレストレス状態であり,集中荷重載荷時は支点上上縁と支間中央下縁の引張応力が増加するものの,引張強度(ft=2.68N/㎜2)以下であることが確認できます.

図-10 σxxコンター,変形200倍(死荷重+プレストレス導入)

 

図-11 σxxコンター,変形200倍(集中荷重載荷)

 

 次に今回の解析によるプレストレス応力の理論解との検証結果を表-1に示します.

表-1 プレストレス応力の理論解との検証

 別途死荷重のみの解析を実施し,フェーズ1の応力値との差分が1次プレストレス応力+2次プレストレス応力に相当するものとし,比較を実施したところ,上表の通り,支間中央下縁,中間支点いずれも概ね理論値と整合する結果となりました.

5. まとめ
 通常,PC設計では骨組計算を実施し,断面単位で発生応力を評価しますが,今回紹介したFEM解析で充分に再現できることが確認できました,また,不静定構造物では2次応力が発生しますが,FEM解析では1次+2次応力として自動的に考慮されるため,骨組によるモデル化が煩雑な場面では非常に有用であると考えられます.

参考文献
1)㈳プレストレス・コンクリート建設業協会サイトより引用
2)DIANA FEAサイト:DIANA Tutorials,Bond-Slip of Post-Tensioned Reinforcement in 2D Elements

 

(縞)

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