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Vol.16 応力浸透連成解析

GTS Tips 2023.07.31

1.はじめに
 土留掘削などの基礎工事を行う際に地下水位低下・被圧水の減圧を目的とした工法としてディープウェル工法やウェルポイント工法などがあります.自然水の水位低下・被圧水の減圧および水位低下による土木工事の簡素化によって、最終的には全体工期の短縮による経済的効果が得られる一方、周辺地盤の水位が低下することによる地盤沈下に注意する必要があります.
 本検討では3次元浸透流解析によりディープウェル工法による水位低下状況を計算し、その水位低下による周辺地盤の沈下量を応力-浸透連成解析により予測可能であるかの検証を目的とします.図-1にディープウェル工法の概要について示します.

図-1 ディープウェル工法 概要図

2.解析条件
2-1 解析モデル
 解析モデルは図-2.1に示すように深井戸φ600mmを中心にした1/4モデルとしました.

図-2.1 解析モデル

2-2 初期水位
 初期水位は地表面から-1.0mの位置として側方の境界面は初期水位で固定としました.
 図-2.2に初期水位と水位境界条件について示します.

図-2.2 初期水位

2-3 解析条件
 図-2.3に示すように深井戸節点の水頭値を1mずつ低下させます.(-12mまで)
 深井戸の水位低下指定を1ステップで-12mとすると解析の収束が悪くなるため、表-2.3に示すように段階的に下げる設定としました.
 応力-浸透連成解析における変位の拘束条件は図-2.4に示すように設定しました.

図-2.4 変位拘束条件

表-2.4に本解析で用いた地盤物性値を示します.
地盤モデルは関口・太田モデル(弾塑性)を用いました.
表-2.4 地盤物性値

3.解析結果
3-1 浸透流解析結果
 浸透流解析の結果を図-3.1に示します.(図は深井戸水位-10.0m時)
 深井戸位置の水位が急激に低下して、それにより周辺の水位も低下していることがわかります.

図-3.1.1 浸潤面

図-3.1.2 圧力水頭コンター図

3-2 応力-浸透連成解析結果
 図3.2.1に鉛直変位のコンター図を示します.(最終ステップ)
 深井戸を中心に周辺地盤が沈下していることがわかります.

図-3.2.1 鉛直変位コンター図

 図-3.2.2に示す深井戸中心から5.0mでの位置に着目して、水位低下量と沈下量を比較します.

図-3.2.2 着目点位置

図-3.2.3に着目点の水位低下量と沈下量の経時変化グラフを示します.
水位低下量と沈下量の比較によって、水位の低下に伴い沈下が発生していることがわかります.
水位が-1.5mから-2.0mに急激に低下しているように見えますが、その位置に粘性土層があり透水係数が低いことが影響していると考えられます.

図-3.2.3 水位低下量と沈下量の経時変化

 図-3.2.4に水位低下量と沈下量の関係について示します.比較として図-3.2.5に示す単柱モデルでの解析も行いました.
 水位低下量と沈下量の関係は水位低下量-1.5m付近までは単柱モデルと近い傾向となっています.-1.5m以降は異なる傾向となっていますが、これは透水係数が低い粘性土層が-1.5m~2.5m付近にあるためと考えられます.

4.まとめ
 今回GTSNX(MIDASIT)で3次元浸透流解析及び応力-浸透連成解析を行い、ディープウェル工法による水位 低下と周辺地盤への影響について検討を行いました.これにより深井戸の水位低下による周辺地盤の水位低下や水位低下に伴う沈下について、解析によるシミュレーションが可能なのではないかと考えられる結果が得られました.
 本検討は深井戸1箇所(1/4モデル)による簡易なモデルで行いましたが、実際の検討行う場合は図-4に示すように深井戸を複数設置してより広域なモデルを作成する必要があります.広域でモデル化する場合は節点数と要素数が膨大になると想定されるため、モデルの簡略化方法(深井戸のモデル化方法等)などについても検証していく必要があるのではないかと考えられます.

図-4 深井戸設置例

(す)

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