Vol.28 複合非線形解析
Civil Tips 2021.09.271.はじめに
P-Δ効果に代表される幾何学的非線形性と材料非線形の両者を考慮する複合非線形解析を実施し,材料非線形解析のみの結果と比較することで,幾何学非線形の影響を確認します。
解析は図-1に示す高さ8mの鋼製単柱を対象とし,箱形の断面剛性はファイバーモデルで再現しました。荷重は,鉛直方向の節点荷重を天端に載荷後,水平荷重を漸増載荷(100STEP)しました。
2.midas Civilでの計算設定
midas Civilでの計算設定画面を図-2~図-4に示します。複合非線形解析の場合は初期断面力を引き継ぐだけではなく,水平荷重漸増中の変形に追随して鉛直荷重の付加曲げモーメントを考慮するため,図-4のように「全体制御」画面にて設定します。
3.解析結果
図-5~図8に最終荷重載荷時の変形図および曲げモーメント図を示します。
幾何非線形性を考慮した複合非線形の場合,基部の曲げモーメントが8.0m×700kN=5600kNmと一致しないのは,P-Δ効果のためで,図-9の通り,変形による付加曲げモーメントを加算すると,6117kNm≒6119kNmとほぼ同等の結果が確認できます。
ファイバー断面の結果を図-10,図-11に示します。材料非線形解析の場合,81step(H=567kN)でフランジが降伏しますが,同じstepで複合非線形解析の場合,ウェブの一部にも降伏が生じていることが確認できます。
図-12に荷重変位関係を示す。材料非線形解析,複合非線形解析いずれも約570kNで降伏しますが,降伏後剛性が異なるため,複合非線形解析による最終荷重での水平変位は,材料非線形解析の2倍以上となりました。ただし,荷重作用高さの1/100の変形レベル(8cm)までは両者に有意差が無いことがわかりました。
4.まとめ
以下に知見を示します。
・静的漸増荷重において,材料非線形性とP―Δ効果を同時に考慮することは可能である。
・回転変形角1/100程度までは,材料非線形解析,複合非線形解析の結果はほぼ同等である。
次の機会に動的荷重での同様な検証結果をご報告できればと思います。