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コーン破壊

FEA Tips 2020.11.27
今回はコンクリートのコーン状破壊の再現解析について紹介します。

 1.設計式での許容引抜き力
  コンクリートアンカーの引抜き耐力は以下の破壊形態に対し計算されます。
  1)アンカーボルトと定着体の付着切れ
  2)アンカーボルトの破断あるいは降伏
  3)コンクリートのコーン状破壊

 本レポートでは3)のコーン状破壊による引抜きについて取り上げます。
 設計で用いられる許容引抜き力の計算式は以下の通りです。

図-1 セラミックインサートのコーン状破壊の概念図

 使用アンカーボルトをM20,Fc=24[N/mm2],Le=100[㎜],D=40[㎜] で許容引抜き力Pa1を計算すると,

 2.有限要素解析
  コーン状破壊の再現性に有利な軸対称モデルとし,解析モデル図を下記に示します。

図-2 解析モデル図

 そのほかの解析仕様は以下となります。

図-3引張域応力-ひずみ曲線

 ・メッシュサイズ:5㎜×5㎜
 ・コンクリートは引張軟化特性による非線形性を考慮
 (圧縮,せん断については線形)
 ・コンクリート引張強度:Ft=1.91N/㎜2
 ・回転ひび割れモデル
 ・引張破壊エネルギーを考慮したHordijkモデルを使用
 (破壊エネルギー:Gf=0.1N/㎜)
 ・等価要素長さ:7㎜
 ・アンカー体とコンクリートの間は完全付着とする
 ・アンカー体は剛体
 ・計算プログラムはmidasFEAver3.7.0を使用
 ・線形解析と非線形静的解析(1step増分ΔP=100N)を実施
 ・ニュートンラプソン法(収束判定:エネルギーノルム)

3.解析結果
 非線形解析に先立ちまず,線形解析での最大主応力図を以下に示します。

図-4 線形解析(P=90kN)の最大主応力ベクトル・コンター /変形:実寸×100

 使用コンクリートの引張強度は1.91N/㎜2で,応答値がそれ以上の要素は赤く表示されるようなレンジ設定としています。
 引張強度以上の領域はアンカー底面に広く分布し,側方での領域は限定的で,コーン状破壊の傾向を示す応力分布となっていないことがわかります。

 次に,非線形解析による荷重・変位関係を以下に示します.

図-5 荷重-変位関係

 先述の設計式で得られた許容引抜き力について,長期荷重用,短期荷重用,ならびに低減係数無しの3水準について荷重-変位関係グラフに追記しました。
 長期荷重の27kNあたりから緩やかに非線形挙動を呈し,低減係数無しの67kNあたりから急激に荷重増加が鈍くなっていることがわかります。
 さらに,荷重―変位関係グラフ上に示すP1~P6の荷重レベルに対する発生ひび割れ状況を図-6に示します。

図-6 荷重レベル毎のひび割れパターン図

 ひび割れパターン図から以下のことがわかります。
 1) アンカー体側方の塑性領域が上下につながったときに荷重-変位曲線の線形挙動から非線形挙動に変わるタイミング(P=27kN)と一致
 2) 線形解析のようにアンカー体直下に塑性領域が拡大するのではなく,側方に塑性領域が拡大
 3) 引抜き荷重が70kNあたりからアンカー体底面から斜め上方へ塑性領域が拡大し,これがコーン状破壊に由来すると考えられるが,45度より緩い勾配で進行する。

図-7 非線形解析(P=90kN)の最大主応力ベクトル・コンター /変形:実寸×100

 先述の図-4と対比させるため,荷重90kN時の最大主応力図を図-7に示します。
 引張強度を越える領域はアンカー底面には無く,側方の上部と側方の下部に存在します。
 なお,さらに荷重レベルを漸増すると,側方の下部の塑性領域が斜め上方に進行し,上部と一体となった後,収束性が悪くなり安定解が得られなくなります。

(縞)

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